2021年11月17日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
拡大する美容整形市場。未経験者の関心を引くには「お手軽さ」が重要
整形市場は更なる成長。脱毛などの非外科的施術から門戸が広がっている模様。
近年、美容整形はますます生活者に近いものとなっている。矢野経済研究所によると、2019年の美容医療市場規模は約4,080億円で、10年前の2009年と比べて1.6倍の成長を遂げている。加えて、コロナ禍でテレワークの普及や、外出頻度低下により、施術後のダウンタイム(傷が治癒するまでの期間)があれど、人目を気にせずに過ごせるというメリットも現れたことから、今後更なる成長が見込まれる分野だ。
図1:美容整形(脱毛、審美歯科を含む)の経験および関心度
今回、筆者は美容整形に関する実態調査を行った。図1は美容整形の経験および関心に関するグラフである。ここでわかるのは、女性は約50%、男性は約25%美容整形に関心を持っているということだ。そして、図2では、美容整形経験層と(未経験の)関心層が関心を持つ施術を示している。1位~5位までの施術は外科的手術を伴わない、いわゆるプチ整形の分類で、美容整形需要の拡大は、「非外科的施術」へのニーズの高まりに起因する模様である。
図2:関心のある施術(経験層+関心層 N=1,065)
美容整形経験層は美容整形外科HP、関心層は広告が情報源。SNSの参考者は少ない。
それでは、(未経験の)関心層の興味を引くために、効果的な情報媒体は何なのか。図3では美容整形の情報収集源を示している。興味深いのは、美容整形経験層も関心層もSNSを参考にする者は少ないことだ。おそらく、世間の目を気にして、SNSをフォローするのは気恥ずかしいという生活者の心情が反映されているのであろう。
図3:美容整形の情報源(経験層 N=522、関心層 N=543)
また、美容整形経験層と関心層を比較すると、経験層の1位は美容整形外科HPである一方、関心層の1位はテレビCMなどの広告全般となっている。経験層は、具体的な料金や施術内容の確認や予約などをするために美容整形外科のHPを訪れていることが予想されるが、関心層は受動的であり、自ら調べるという行為には至っていないのだ。つまり、関心層へのアプローチとしては、まずマス広告で興味・関心を高めていくことが重要といえる。加えて、非外科的ニーズの高まりを鑑みると、訴求内容は「お手軽さ」「外科手術を伴わないライトさ」などが有効であると考えられる。
今後、広告を通して、ますます美容整形に対する価値観・ニーズは変化するであろう。筆者は「脱毛をしていないとモテない」などと恐怖を煽るような広告が個人的に好きではない。多くの人が持つであろう「美しくなりたい」という気持ちをリスペクトし、その一つの手段として、美容整形が成長する未来を期待している。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースデータ(2021年7~9月、関東在住男女20~59歳、N=2,878)
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 コンサルタント 梅畑友理菜