2021年10月 6日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
コロナ前後で浸透の進んだキャッシュレス決済、デビュー組はうっかり使い過ぎに要注意
キャッシュレス決済の利用頻度増加は「お得」に敏感な層から進む
今や買い物に行くとどこにでもある飛沫防止用のビニールカーテンやアクリル板。透明な仕切りを通して見るレジの風景はすっかり日常に馴染んだが、レジ周りでは他にも変化しつつある風景がある。クレジットカードや電子マネーなど、現金に代わるキャッシュレス決済を利用する人の増加だ。
図1:コロナ禍前後におけるキャッシュレス決済の利用頻度
図2:キャッシュレス決済の利用理由
コロナ禍前後でのキャッシュレス決済の利用状況を図1で示した。コロナ前からキャッシュレス決済を使っていて利用頻度が増えた人が4割、コロナ禍をきっかけに利用し始めた人が1割と、キャッシュレス決済の利用が増えた生活者は全体の約半数に上る。節約意識の強い層ではキャッシュレスの浸透はより進んでいることも分かる。キャッシュレス決済を使う理由を尋ねると(図2)、「ポイントが貯まる」が約7割と最も高く、「お得」なイメージがキャッシュレス決済の拡大に大きく貢献していると言えそうだ。
キャッシュレスデビューから日が浅い層は「ついお金を使い過ぎてしまう」不満が強い
キャッシュレス決済はお得だから使わないと損、なのだろうか。今度は利用者が感じている不満を確認してみよう。コロナ前後の利用状況別に整理したのが図3だ。
図3:キャッシュレス決済の不満点
利用状況にかかわらず最も多い不満は「どのお店で使えるのか分かりにくい」だが、注目したいのはコロナ禍をきっかけに利用し始めた層。「支払いの感覚が薄く、ついお金を使い過ぎてしまう」が約3割と2番目に多い不満となっている。コロナ前から利用している層では2割未満に留まるため、一定期間使いこなすうちに不満が解消されていく可能性はあるが、使い始めて間もない利用者からすれば、お得だと思って始めたにもかかわらずかえって家計に悪影響を与えるようでは、現金派に逆戻りしてしまいかねない。
利用理由にもあるように、キャッシュレス決済は家計簿アプリとの連携など使い方次第で家計管理を容易にする手段でもある。利用者側ではそうしたツールの活用で使い過ぎを防ぎつつ、事業者側も目先の還元額の訴求に終始するのではなく、買い物自体の満足感や納得感を高めることで不満を防止することも必要になってくるだろう。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 副主任コンサルタント 皆川聡美