2021年9月29日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」

高額軽自動車に期待するのは動力性能・メカニズム、そして「軽EV」

軽自動車に200万円以上お金をかける人は、「動力性能」「メカニズム」を期待

 軽自動車が高くなったという声をよく耳にする。実際に車両価格が200万円を超えるモデルも各社で販売されているが、それでも高額軽自動車は売れている。軽自動車の中でも、ホンダS660やダイハツコペンなどのスポーツタイプは当然ながら200万円を超えるのだが、普通の軽自動車においても軽ハイトワワゴンや軽スーパーハイトワゴンと呼ばれる車種は200万円を超えるモデルも珍しくない。これらは軽自動車とは思えない車格感や広々とした室内空間で使い勝手がよく、先進安全装備や快適装備が充実しているのも特徴である。

図表1 軽自動車購入意向者における自動車に重視するポイント

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 では、軽自動車の購入意向者の中で、購入予算が200万円以上の人は何を求めているのか、NRIインサイトシグナルデータより見てみたい。図表1では軽自動車購入意向者に限定して、自動車に対して重視するポイントをまとめたものである。購入予算200万円以上の人は燃費や税金・保険等は重視していないが、近年の軽自動車主流の特徴である「室内の広さ」や「安全性」についても、重視ポイントとしてそれほど高くないことが分かる。予算200万円未満の人と比べて特徴的なのは「動力性能」や「メカニズム」である。

 軽自動車においても、グレードによって4WD4本のタイヤ全てがエンジンの力を受けて走る車)を選択できる車種が増え、消費者ニーズは高い。これらは、高速道路での加速や雨天走行時の安心感、悪路や雪道への備えだけでなく、近年のアウトドア・レジャーニーズも後押しになっている。SUVまでとはいかないが、軽自動車も室内が広くなったことから使い勝手の良さが評価されており、アウトドア・レジャーにおいても軽自動車で乗り入れることがニーズとして高まっている。車両価格200万円以上する軽自動車の訴求においては、先進安全性能や室内空間の広さなどの機能的価値の訴求だけでなく、アクティブなライフスタイルを実現する車としての情緒的価値の訴求も合わせて行うが有効である。

さらには、「軽EV」に対する期待も

 軽自動車に200万円以上支払っても良いとする人は、環境対応車に対する意向も高い(図表2)。ハイブリッド車については、軽自動車でも低コストなマイルドハイブリッド車が200万円未満で売り出されているため、購入予算別に意向の違いは見られないが、プラグインハイブリッド車および電気自動車については、購入予算が200万円以上の人において意向が高い。エンジン機構の特徴から車両価格は必然的に200万円を超えるだろうが、これら環境対応車が軽自動車に投入されることに対する消費者側の受容性は期待される。

図表2 軽自動車購入意向者における環境対応車意向

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 軽EVは自動車メーカー各社にて開発・販売が発表されており、今後軽自動車の競争舞台が軽EVにシフトしていくだろう。販売自体は2022年度以降だが、今後の販売戦略として、高額軽自動車(軽EV)を求める人がどのようなペルソナ像であるのか、そしてどのようにコミュニケーションを取るべきか、いち早く検討していくことが望まれる。

出所)NRI インサイトシグナル シングルソースデータ

NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 林裕之 主任コンサルタント

NRIマーケティングサイエンスコンサルティング部では、シングルソースデータによる生活者の行動を毎日継続的に収集しております。お客様のテーマや課題にあわせて、データの追加調査や分析をおこない、マーケティング課題解決のお手伝いをいたしますので、こちらより、お気軽にお問合せください。