2021年2月 1日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
化粧品はネット購買が拡大しても店頭での情報収集は欠かせない
顔だけに留まらない、続くスキンケア重視
「スキンケア重視志向」は続いている。図1は、女性20-50代における「化粧品の購入において、スキンケア商品を重視するようになった」の回答の推移であるが、2020年6月から12月にかけて伸び続けている。19年12月時点で29.7%だった肌荒れ悩みが20年12月には33.9%に増えていることから、スキンケア重視の推移が単なる季節変動とは言えないようだ。
図1 「化粧品の購入において、スキンケア商品を重視するようになった」の回答率
加えて、手荒れを気にする声も少なくない。コロナ禍で「手洗いや消毒で、手荒れが気になるようになった」女性は35.8%に上る。例年以上にスキンケア・ボディケアへの関心が高まっており、長引く予防・消毒生活で習慣化される見込みである。
店頭での現物確認の重要性は根強く残る
コロナを機に、世の中全般にインターネットでの買い物が広がり、化粧品においてもその動きがみられている。2020年4月の緊急事態宣言から8か月経った12月時点では、店頭で実物を見ることなく化粧品を選ぶようになったのだろうか。
図2 化粧品購入時の参考情報
図2で化粧品購入時の参考情報をみると、テレビCM、クチコミサイト、SNSも上位に挙がっているものの、トップは店頭商品、4位にはテスターが位置づく。また、「@cosmeなどのクチコミサイト」を参考にしている女性(33%)のうち、約半数(14%)は「店頭商品やテスター」(「店頭・店内の商品」または「店頭・店内のテスター」)も参考にしている。実際、コロナ禍で「店頭のテスターの設置が減り、化粧品を選びにくくなった」の声は14.4%みられ、若年層においても店頭での現物確認の重要性は根強く残る(図3)。
図3 「店頭のテスターの設置が減り、化粧品を選びにくくなった」の回答率
ウインドウショッピングの機会が減少している昨今、売り手は広告やクチコミ情報をもとに店頭への「目的買い訪問」を促し、店頭で購入への最後の一押しが行えることが望ましい。もしくは、広告等の施策を通じて、店頭接触に近い状況を疑似体験できる工夫が求められる。中国で拡大しているライブコマースは日本ではまだ小さいが、5Gの本格的な拡大に伴い伸びる可能性を秘めており、施策のメニューの1つとしてウオッチしておくことが重要である。
注)図や文中の数値はすべて女性20-50代を対象に集計
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースパネルデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 高橋弓子 上級コンサルタント