2021年1月29日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」

動画視聴中のインストリーム広告は「不快感」が高く、効果も低い

世代問わず、デジタル広告は不快感が高い。特に動画視聴が中断される広告が課題

 従来にはなかったターゲット性能や観測指標の豊富さから、年々重要度が高まっているデジタル広告。一方で、従来のマスメディアと比較し、反響が感じづらいなどの課題もある。本レポートでは、動画が途中で止まって広告が流れたり、ポップアップでページ閲覧が止められてしまうなど、配信方法により生活者が感じる不快感の影響を解説する。

図表1 デジタル広告に対する不快感(TOP1/掲出タイプ別)

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 広告への不快感を調査すると、デジタルメディアはその他メディアに比べ突出して高いことがわかっているが、デジタル施策の中でも不快感に差がある。図表1では、デジタル広告の掲出タイプ別に不快感TOP1(=とても不快に感じる)を見ている。特に高かったのがTrueviewなどインストリーム広告の41.8%で、視聴している動画が中断されて広告が流れることで不快感を示しやすいことがわかる。一方で、SNSなど、コンテンツや記事間のインフィード広告では、22.7%の不快感と最も低く出ており、見たくなければスルーできることからも不快感を与えづらいと言えそうだ。

強制的に差し込まれることで、広告認知は担保されるが、広告効果は低くなる

図表2 デジタル広告の広告認知率と認知者あたり広告効果

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 図表2では、
2021612月に出稿された施策の広告認知と広告効果を比較している。インストリーム広告では、インフィード広告に比べて、広告認知は獲得しやすいものの、認知者あたりの広告効果は低い傾向がある。スキップ可能とは言え、数秒間は広告を見させられるため、認知はするが、嫌々ながら見ることによる効果が低いということだろうか。その逆で、インフィード広告はコンテンツの間に挟まれて表示されるだけなので見させられる感覚はない一方で、容易にスルーされてしまい認知は獲得しづらい、と言える。

インストリーム広告は嫌われる前提で。インフィード広告はスルーされやすい前提で。広告認知と態度変容まで把握すべき

 デジタル施策の出稿先を検討する際には、それぞれの特徴を理解することが重要だ。インストリーム広告では、不快度が高い一方で、多少嫌がられてでも広告を見せることで広告を認知させることができるし、インフィード広告は音も流れないことも多く、興味がないと手を止めてくれないが(広告認知は獲得しづらい)、嫌がられずに見てもらえやすい。。プロモーションの目的や出来上がったクリエイティブからふさわしい出稿先を選びたい。

 impに始まりクリック率や視聴完了率など、刈り取りに関する指標は多数あるが、それだけでは嫌がられながらの影響までは分かりづらい。オンライン上の行動がどうだったかだけでなく、広告認知はされたか、どのような態度変容が起きたのかを施策別に把握し、「不快感」を越えて広告効果があったかまで確認する必要がある。

出所)NRIシングルソースデータ

NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 主任コンサルタント 森田 光一

NRIマーケティングサイエンスコンサルティング部では、シングルソースデータによる生活者の行動を毎日継続的に収集しております。お客様のテーマや課題にあわせて、データの追加調査や分析をおこない、マーケティング課題解決のお手伝いをいたしますので、こちらより、お気軽にお問合せください。