2021年1月21日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」

「ビールはNEWS23、新ジャンルは報ステ、エナジーならWBSに出稿せよ」

継続視聴率の高い「ワールドビジネスサテライト」、リーチの広い「NEWS ZERO」

 企業がテレビのタイム(番組)を購入する場合、その番組を視聴している性別や年代などの属性情報を参考にすることが一般的である。バラエティは若い男性、刑事ドラマは中高齢女性、といった具合だ。ただ、本当にそれだけで出稿番組を選定してよいのか。実は視聴者側からみて視聴特性を分析すると、新たな視点がいくつか出てくる。今回は、各局が同じように放送している夜のニュース帯番組をテーマに分析する。

夜のニュース帯の「週1回以上視聴者率」と「週4番組回以上含有率※」※週1回以上視聴者を母数とし、そのうち週4回以上視聴している人の割合

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 視聴率とは該当する番組をどのくらいの人が見たのかを表すもので、放送毎に算出する。それに対し右表の「週1回以上視聴者率」とは、この期間中に1回でも見た人の割合を算出したものである。毎回の視聴率が高い「報道ステーション」が当然高く、この番組に毎日広告を出稿すれば17.3%の人に1回以上触れさせることができる。ただこれにはフリークエンシー(何回触れるか)の概念がない。そのため、週1回以上視聴者のうち、ほぼ毎日(週4回以上)見ている人の割合を計算すると、ワールドビジネスサテライトが46.1%と圧倒的に高く、約半数が毎日見ている。この番組に出稿すれば、1間であっという間に5回のフリークエンシーが稼げるため、同じ人に何度も繰り返し接触させたい、という狙いには非常に有効である。一方、news zeroを見ると21.0%しかなく、これではフリークエンシーが稼げない、と思われるかもしれない。ただ、週1回以上視聴者率は高いにも関わらず繰り返し視聴者が少ないということは、裏を返すと非常に多くの人にリーチすることができるという特徴を持つことになる。そのため、インパクトのある(フリークエンシーが必要ではない)クリエイティブの場合には、このような番組のほうが効率的であるといえる。このように、単に平均の視聴率や属性で番組を選ぶのではなく、企業の目的やクリエイティブに応じて、番組を選定することが重要なのである

ビールは「NEWS23」新ジャンルは「報ステ」など、カテゴリにあったタイム番組の選定が効果的

夜のニュース帯番組の「カテゴリ別飲用率※ 」※カテゴリによって飲用率の定義は可変

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 続いて、先ほどのニュース番組を視聴している人が、どのような消費行動をとっているかを、飲料カテゴリを例に分析する。右表のとおり、カテゴリによって飲用率が大きくことなっているのが分かる。NEWS23を週1回以上見る人のうち、缶コーヒーを良く飲む人は29.5%と非常に高い。同じように、報道ステーション視聴者なら炭酸飲料、ワールドビジネスサテライト視聴者なら、エナジードリンクとの親和性が高い。また、同じアルコールであっても、ビールと新ジャンルでは番組別に飲用率が異なっている。もちろん番組そのものの視聴率や、先ほどのフリークエンシー(重なり視聴)の状況、さらには広告のインパクト(覚えやすさ)など、複合的に要因を加味する必要があるが、同じような帯のニュース番組の中でも、これだけ視聴者層が異なっていることは事実である。広告出稿先として、テレビのタイム(番組)を選定する際には、単に視聴者の性年代だけではなく、自社商品のカテゴリとの親和性なども考慮すべきポイントである

出所)NRI インサイトシグナル シングルソースデータ(20208~10月:n=6,318名)

NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 松本崇雄

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