2020年11月24日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
群雄割拠の動画配信。テレビ代わりのTVer、コンテンツのABEMA
ステイホーム期間だけじゃない。まだまだ広がる動画配信サービス市場
自粛生活をきっかけに盛り上がりを見せた「動画配信サービス」が、ステイホームが緩和された現在も好調だ。インターネット配信で動画コンテンツを楽しむ行動は定着どころか、7月以降もユーザー数を伸ばし、市場規模を拡大させている。
図1 動画配信サービス利用率
図1は関東20歳~69歳における2019年4月~2020年8月までの主要動画配信サービス利用率の推移である。YouTubeは4~5月に一時的に高まった後、しばらくして元の水準に戻る中、2番目に利用者の多いAmazonプライム・ビデオ(以下AmazonPV)は緊急事態宣言期間にかかわらず、じわじわと利用率を伸ばしている。次ぐ、TVer、ABEMA、Netflixなどは緊急事態宣言を皮切りに利用率を一段階上げ、特にTVer、Netflixは7月以降も拡大している。このトレンドはステイホームだから利用者が増えただけ、とは言い難く、新しい市場が一段階ギアを上げて拡大していると捉えた方がよさそうだ。
コンテンツ好きが集まるABEMA、大衆化するTVer、ヘビーユーザーの多いNetflix
動画配信サービスに出稿することで、どんな人にリーチできるのだろう。利用者の違いについて、まずは年代別で比較すると、Netflixでは20代が全体の34.5%と特徴的に多いものの、TVerやAmazonPVは20代が20%前後と、動画配信サービスはもはや若年ばかりが利用しているサービスではない。直近では、AmazonPVは若年よりも40~60代の方が利用者数の伸長率は高く、TVerは20~50代までほぼ同じ比率で伸長を続けるなど、幅広い世代で利用が広がっている。
図表2 動画配信サービス利用者のテレビ平均視聴時間×男性比率
図2は各サービス利用者におけるテレビの平均視聴時間と男性比率をプロットしたものである。ABEMAは特徴的に男性が多く、またテレビの視聴時間も長い。コンテンツ好きが多いとされるスカパー!、WOWOWと近い属性傾向を持ち、さらにほかの動画配信サービスの併用率が高い傾向もみられるため、コンテンツを選好する層を獲得していることが伺える。
一方、TVerは男女ほぼ半々で、テレビの視聴時間が長い。一般的なテレビ視聴者の特性を維持しつつ、若年にも広くリーチできる"新しいテレビ"として成長している。Netflixについては、利用者の熱狂度が特徴だ。他サービスと比べて、1回あたりの平均利用時間が長く、ほぼ毎日利用する人が最も多い傾向が弊社データから観測されている。
今後も若年層に限らず拡大が予想される動画配信サービス市場。動画配信サービスと一括りにすることなく、それぞれの特長を捉え、効率的な出稿先を検討していただきたい。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースパネルデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 原野朱加 主任コンサルタント