2022年12月 8日
ニュースリリース
野村総合研究所、「Base」「Lead」「Trend」の3要素を基軸とした新しいブランド評価指標NBIを開発し、毎年ランキングを発表
〜「NRI BRAND INDEX」の活用で、各社のブランド力向上を支援〜
株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役会長 兼 社長:此本臣吾、以下「NRI」)は、一般生活者による商品・サービスのブランド評価に関して、NRI独自の生活者調査結果に加え、SNSを通じた人々のコミュニケーションによるブランド力のダイナミックな変動を取り込み、ブランドの将来性も加味した新しいブランド評価指標「NRI BRAND INDEX」(※商標出願中、以下「NBI」)を開発しました。
NBIは特定の商品・サービスごとに、過去から蓄積されたブランド力※1を示す「Baseスコア」、今後のブランド力の方向性を推測する「Leadスコア」、直近のブランド力の変動を示す「Trendスコア」の3つの指標、およびそれらから合成する総合指標「NBI」で構成されています。これらを測定・算出することにより、当該商品・サービスについて、現在のブランド力だけでなく、ブランド力の将来性についても把握することができます(図1)。
図1.NRI BRAND INDEXを構成する3つの指標(スコア)とその内容
BaseスコアおよびLeadスコアは、ブランド・レゾナンス・モデル(後述)をベースとしたモデリングを行っており、生活者アンケートに基づいてブランドごとの強み・弱みの特徴(機能的な評価・情緒的な評価など)を測定できます。Trendスコアについては、当該商品・サービスのブランドに関するSNSの投稿数変化を計測しており、同一カテゴリー内の商品・サービスに関して、投稿数の変化をスコア化して捉えます。
2023年1月から、NBI測定のための大規模調査「NRI BRAND INDEX 2023」を開始し、食料品、日用品、耐久消費財など幅広い分野について、商品・サービスのカテゴリーごとのブランドランキングを、同年2月より順次公表する予定です。また、この調査結果を基に、企業へのブランドコンサルティングサービスを提供し、各企業がより生活者起点でブランド力を向上するために行う様々な活動を支援していきます。
1. NBI開発の背景
商品・サービスに対する生活者のブランド評価については、多くの企業において実施されていますが、現在までに培われた自社商品・サービスのブランド力を評価したものが多くを占めます。一方、ブランドに対する生活者評価がダイナミックに変動する現代においては、ブランドの将来性を加味した評価を捉え、それに基づくブランド・マネジメントやマーケティングを行っていくことが必要になります。
そこでNRIでは、各企業のマーケティング担当者にとって扱いやすい商品・サービスのブランドを単位として、現時点のブランド力に将来性も加味した形で定量的に把握できることを目的として、ブランド評価指標NBIを開発しました。
2. NBIの概要
NBIは、NRIがこれまで多数の企業向けに実施してきたブランドコンサルティングで得た知見と、アドバイザーとなっていただいた慶應義塾大学商学部 清水聰教授の助言を基に開発が進められ、以下の特長を有しています。NBIは、下記に示す「Baseスコア」「Leadスコア」「Trendスコア」の合成により構築された、総合指標となります。
- 過去から蓄積されたブランド力(Baseスコア)を構造的に把握できる
- ブランド力の将来性を示すスコア(Leadスコア)も提示する
- ブランドの話題性を加味し、ブランド力のダイナミックな変化を捉える(Trendスコア)
ブランド力の構造的把握(Baseスコア)
マーケティング担当者がブランド戦略を検討するためには、まずは現状における自社商品・サービスのブランド力についての評価を、構造的かつ詳細に把握することが必要です。そこでNBIのBaseスコアでは、過去から蓄積されたブランド力を示すものとして、ブランド・エクイティ研究※2の第一人者であるケビン・レーン・ケラーのブランド・レゾナンス・モデルの考え方をベースに、NRI独自の要素を加えたモデリングを行っています(図2)。
図2.NRI BRAND INDEXのBaseスコアを構成する要素(イメージ)
ブランド・レゾナンス・モデルは、ブランドと生活者の関係性を示したものです。そのブランドを認知したり頭の中に想起できたりする段階を「セイリエンス(Salience)」と呼び、そのような認知・想起の段階から次第にブランドへの理解・評価が高まることで、そのブランドとの関係性が深まることを、図2のピラミッド階層のように表現しています。
ブランドへの理解・評価の段階は、機能的側面を指す「パフォーマンス」「ジャッジメント」と情緒的側面を指す「イメージ」「フィーリング」の4つの要素で構成され、さらに上位の関係性として、ブランドへの共感・愛着を示す「レゾナンス」で構成されます。NBIでは、このブランド・レゾナンス・モデルにおける理解・評価段階の構成要素について、昨今着目され、生活者側でも多くの商品・サービスについて充足ニーズの高まっている「SDGs要素」を加えた形でモデリングを行っています。具体的には、上記モデルに基づいて設計された生活者アンケートにより得られたデータを分析し、ブランドごとに強み・弱みの特徴を可視化するとともに、上図のピラミッド構造に応じた加点の重みづけを行い、各評価要素の得点の合計点をBaseスコアとして算出します。
ブランド力の将来性を加味(Leadスコア)
一般的に新しい商品やサービスは、「オピニオンリーダー」層から順に評価が行われる傾向があります。オピニオンリーダー層の特徴として、特定の商品(その人自身が興味を抱いているカテゴリーの商品)への関心が高く、様々な情報源から積極的に情報を収集して、クチコミやSNS等でも活発に情報発信する傾向があります。これらの特徴を踏まえ、オピニオンリーダー層による評価が、当該商品の将来における世の中全体のブランド評価の先行指標となるものと考え、NBIではLeadスコアとして採用しています。
オピニオンリーダーは生活者アンケートの回答者の中で、カテゴリーごとに「情報収集を積極的に行い、新商品に対する感度が高い人」を抽出しています。そしてLeadスコアについては、カテゴリーごとのオピニオンリーダーに限定して、Baseスコアと同様の方式でスコアを算出します。
ブランド力の「今」を把握(Trendスコア)
商品・サービスに対する生活者のブランド評価は、SNSが浸透する前は、主に企業から発信される情報・イメージで構築されることが多かったため、変化はゆるやかであり、年1回の調査で十分把握できました。しかし現在では、SNSを通じた人々の活発なコミュニケーションによって、ブランドに対する評価がダイナミックに変化しうる時代となっています。
NBIでは、個別の商品・サービスが持つ現在のブランド力の勢いを示す指標として、「話題性」に着目しました。この「話題性」は、SNS解析ツールにより、当該ブランドに関する投稿数の変化で捉えることができます。実際に、新商品が出たタイミングや、芸能人やオピニオンリーダーからの投稿をきっかけに、ブランドごとの投稿数が大きく変化していることが観測できます。この投稿数の変化を、NRIが構築した独自のロジックにより、Trendスコアとして指標化し、ブランドの「今」を把握するために採用しています。
3. 測定結果の活用
NRIでは、2022年8月にシャンプー、日焼け止め、ビール、SUV(自動車)などの8つの商品カテゴリーについて、NBIのプレ調査を実施しました。その結果から、各カテゴリーの上位ブランドにおいても生活者から評価されている点が異なることや、ブランドの将来性や話題性を加味することで、将来的にランキング順位の変動が予測できるモデルであることが確認できました。
NBIによるブランド診断を導入することで、各企業が自社商品・サービスのブランドの現在の立ち位置および将来の変動を予測することができ、ブランド力向上のための戦略策定に役立てることができます。また、各企業が施策を実施した際には、その都度「Insight Signal※4」による効果検証を行うことで、ブランド戦略の軌道修正を適宜行い、生活者起点のブランドマネジメントサイクルを構築していくことができるようになります(図3)。
図3.NBI導入によるブランドマネジメントサイクルの高度化(イメージ)
4. 今後の展開
2023年1月以降、商品カテゴリーを20以上に拡大したNBI調査「NRI BRAND INDEX 2023」を実施します。NRIはこの調査結果を基に以下のサービスを展開し、各社が生活者起点でブランド力を向上するための活動を支援していきます。
- ブランド評価結果の詳細レポートの提供
- 詳細レポートを基にしたブランドコンサルティング
- Web版ダッシュボードツールの提供(Tableau※5にて構築予定)
調査結果のうち、BaseスコアとNBI(総合指標)のカテゴリー別ランキングについては、2023年2月より、順次NRI「INSIGHT SIGNAL(インサイトシグナル)事業」Webサイト(https://www.is.nri.co.jp/)にて公表していく予定です。
NRIでは、現在「NRI BRAND INDEX 2023」で調査対象とするカテゴリーおよび商品・サービスのブランドについて検討・選定中です。この取り組みに興味を持たれた企業で、自社で取り扱っているブランドについてご要望をお知らせ頂ければ、調査対象として優先的に検討しますので、下記の【本件に関するお問い合わせ先】までご連絡ください。
※1 ブランド力とは商品・サービスの名称やロゴがもつ価値のことであり、利用者や一般的な消費者によって形成される無形資産(形がなく、目には見えない資産)のこと
※2ブランド・エクイティとは「ブランドが持つ資産価値」のことで、ブランドという形のないものを資産として評価し、その価値を高めるために育成や投資をする考え方
※3 ケビン・レーン・ケラー『エッセンシャル戦略的ブランド・マネジメント第4版』東急エージェンシー、2015年
※4 NRIが提供する、シングルソースデータを活用して広告効果を科学的に測定するサービス。詳細は次のURLをご参照ください。https://www.is.nri.co.jp/
※5 TableauはBI(ビジネスインテリジェンス)に特化したインタラクティブなデータの視覚化ツール。日本語サイトは次のURLをご参照ください。https://www.tableau.com/ja-jp
【ニュースリリースに関するお問い合わせ先】
株式会社野村総合研究所 コーポレートコミュニケーション部 玉岡、梅澤
TEL:03-5877-7100 E-mail:kouhou@nri.co.jp
【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部
マーケティングサイエンスコンサルティング部 梶原、林、淺桐
E-mail:nbi@nri.co.jp