2021年5月26日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
コロナ禍で変わる食意識。コンフォートフード(癒しの食)のその後
NRIマーケティングレポートのVol.1では「在宅生活で増加するチョコレートの消費」と題して、コロナ禍のストレスでコンフォートフード( =食べることで幸福感・安心感が得られる食品)の消費が全世界的に増えていることをご紹介した。また、健康を意識した食品・商品の購入が伸びていることや、コンビニ利用・外出関連食品・飲料の減少についても紹介してきたが、それから1年以上が経った現在、飲食品購入まわりの行動・意識はどのように変化したかを見てみよう。
チョコレート・炭酸飲料等の「癒しの食」消費は落ち着いた
図1 コンフォートフード1ヶ月以内購入率(前年同月比)
甘さが癒しを与えるチョコレート、すっきりリフレッシュできる炭酸飲料は、第1回緊急事態宣言時に前年比で大きく伸び、その後高位安定となるも、第2回時には落ち着いた。ストレスを食で発散するのにも飽き・限界が来ており、むしろ肥満や健康意識に配慮した食生活に立ち返った、また、いわゆる「コロナ慣れ」でそもそもストレス自体に耐性がついてきたといったところだろうか。スナック菓子やスイーツなどもコンフォートフードとされるが、同様の傾向をたどっていると思われる。
インスタント食品は楽しみ・癒しの食でありつつも、コロナ禍で増えた内食機会への対応、非常食の備蓄の意味も兼ねており、第1回緊急時代宣言時の伸長から高位安定し、第2回ではさらに伸びている。コロナ期の食事準備の負担は39.4%と4割が感じており、悩みの内容としては、「片づけ・洗い物が面倒」「献立を考えるのが面倒」「レパートリーが少ない」がTOP3となっている。インスタント食品は、こうしたコロナ期の食事準備のお助けアイテムであり、レトルト食品や調理補助品(調味ソース等)なども、同様の軌跡をたどるだろう。ちなみに、第1回緊急事態宣言時に大きく伸びた「趣味=料理の割合」や「レシピサイトの利用率」に見られる手作り志向についてはその後下落し、時間をかけて凝った料理に挑戦するのも飽きが来たという感がある。
外出時のコンビニ購買は低迷。健康食品は選別へ
図2 コンビニ・外出関連商品の1ヶ月以内購入率(前年同月比)図2にある通勤や外回り時、仕事時のお供ともいえる缶コーヒー、ガムなどは、当該オケージョンやコンビニ利用回数の低減によりコロナ期には減少し、元に戻っていない。お茶はスーパーマーケットの大容量ボトルを健康・買い置き目的で購入するなどで第1回緊急事態宣言時には高かったが、その後はやはり前年比で100%を下回る。これらの「仕事のお供」商品群については、今後は長期的・不可逆的な働き方変化が見込まれることから、新たなベネフィット訴求が必要になるだろう。
図3 健康関連商品の1ヶ月以内購入率(前年同月比)
図3では健康関連商品のトレンドを見ているが、第1回緊急事態宣言時にはすべて前年比で100%を超えていた「ヨーグルト」「サプリメント」「トクホ飲料」は、その後本格的にコロナ期の生活が定着し始めると、それぞれ異なった動きを見せている。ヨーグルトは健康食品として習慣化し高位安定、サプリメントは増減しつつも100%前後を推移しているが、
トクホ飲料はその後落ち込み、図2のコンビニ・外出関連商品に近い動きを見せている。トクホ飲料は、仕事・外出時のランチとともに、少し生活習慣病が気になる人が利用するものであり、コンビニ利用と深い関係にあるということかもしれない。
いずれにしても、コロナ禍によるライフスタイル、健康意識の変化は、生活者の食意識を大きく変えた。「食べること」は生活の基本であり、消費の根幹でもある。生活者の目線に立ってトレンドを読み解くことで、有効なマーケティング戦略の構築や、新たな消費トレンドの創出が可能になるだろう。
出所)すべて:NRI インサイトシグナル シングルソースデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 松下東子